最近、乳癌におけるさまざまなmicroRNAの発現量と癌の発生・進展などとの関連性についての報告がなされている。

ヒト乳癌細胞を 移植したマウスの転移巣から再樹立した高転移細胞株において、microRNAの発現量が抑制されているmicroRNA-335,microRNA-126,microRNA-206を、親株と同等のレベルまで回復させた場合、高転移細胞株の骨や肺へ転移する能力が抑制されたことが明らかになり、実際に、この3種のmicroRNAは乳癌患者の転移組織においてもその発現量が低下していることが明らかとなった。

さらに、20例の臨床検体を検討した結果、これらのmicroRNAsの発現低下と転移との相関性が認められたことも報告されている。 特にmicroRNA-335は乳癌細胞の浸潤転移に関与する遺伝子群を制御しおり,microRNA-335の発現低下するとSOX4とTNCという細胞運動能に関与する成分が亢進し、遠隔転移を発生させる結果となることが明らかになった。また、 microRNA-373とmicroRNA-520cがCD44の発現抑制を介して乳癌細胞の浸潤転移に関与していることも報告されている。

これらにより、今後、乳癌だけでなく他の癌種においても、転移を押さえ込むことが可能なmicroRNAsの発見についての研究がなされ、診断・治療への道が開かれることになる。