核酸医薬とは、内在性の遺伝子発現を調整する20前後の塩基配列を持つ DNA またはRNA 断片を含む医薬の総称である。

そのなかで、最近、注目されているのが microRNA を含有する核酸医薬である。microRNA は複数の標的 mRNA の翻訳抑制やDNA複製の微調整に機能するため、とくにsuppressor microRNAの変性・消失は癌の発生・増殖に深く関与することとなる。そのため、癌組織内にmicroRNA を補充により癌の進展などを抑制することが可能となる。

このように、microRNAによる治療は、元来、正常組織に発現している癌抑制性の microRNA を外部から補うという考え方である。(microRNA replacement therapy(microRNA補充療法))一方で、microRNAは血液中のRNA分解酵素(RNase)により容易に分解されてしまうため、分解酵素から保護するためのナノ粒子が開発されている。

今後、よりDDS効果を発揮し、癌組織へ集中的にmicroRNAを送り届ける核酸医薬の開発が急務となる。