DDS技術であるターゲティング技術・吸収促進技術・放出制御技術は、バイオ技術・ナノ技術・素材科学・IT技術などの発展とともに急速に発展していくと思われる。特にターゲティング技術のためのナノ技術の発展が期待されている。

DDS技術、特にターゲティング技術が遺伝子治療、再生医療、癌治療における重要技術になると期待される。

抗癌剤の問題点の一つは、その薬効発現量と副作用発現量が近いことである。十分な治療効果が期待できる投与量では重篤な副作用が発現するため、癌化学療法剤を用いる治療の限界になっている。投与した抗癌剤のほとんどが目的とする病変に到達する前に、正常組織・正常細胞へ移行し副作用が発生する。

腫瘍部位に集積可能な特性を持つキャリアに抗癌薬を封入し、腫瘍部位に集中的に到達させた後、薬物を効果的に放出・作用させることができるDDSが注目されている。

特に、癌組織では正常組織に比し、豊富な新生血管には100ナノ前後の間隙があるため、高分子化合物が選択的に蓄積されるEPR効果がある。

DDSにより癌病変まで到達した、薬剤封入キャリアはEPR効果により癌組織内に蓄積し、放出制御装置により癌細胞内で薬剤効果が発現する。

これらのシステムは、癌組織へのターゲティングだけでなく他の疾患部位へのターゲティングへも応用可能であり、今後、DDS製剤は、既存の薬物をナノ粒子に封入した製剤的DDSだけでなく、創薬段階からDDS技術を取り込んだ創薬的DDSがさまざまな治療の根幹を形成すると考えられる。