葉酸はビタミンB群の一種で、DNA合成に必要であり、すべて細胞分裂に必要なビタミンB12が含まれる重要な反応についての基質である。

葉酸はいくつかのDNAの生合成に必要であるため、葉酸が欠乏すると多量のDNAを必要とする細胞分裂の盛んな造血器官等の機能に深刻な影響を与える。

また、葉酸を触媒的に再生させるビタミンB12が欠乏しても同様な欠乏症が現れる。

葉酸受容体は、卵巣癌や子宮内膜癌における過剰発現やマウス胚における神経管閉鎖部位での特異的な発現が報告されており、臨床医学および生命科学研究において重要な標的分子である。

実際に近年、葉酸受容体の発現を可視化する蛍光試薬を用いた臨床試験で、癌摘出手術中に目では見分けにくい腫瘍部位を見つけるための利用が報告されている。

また、癌治療における抗体の標的分子としても注目されている。

今回、動物体内で葉酸受容体発現が高い癌部位を、短時間に明瞭に蛍光検出できる近赤外光領域の蛍光試薬が開発された。

この蛍光試薬を、葉酸受容体を発現している癌を持つモデルマウスに静脈内投与すると、30分以内で癌部位を蛍光検出することが確認された。

今までの蛍光試薬は、葉酸受容体が発現していない正常細胞にも吸着してしまう偽陽性が問題となっていたが、葉酸受容体にだけ吸着する蛍光試薬が開発された事により、動物において、葉酸受容体が高発現している癌細胞の選択的な検出が可能になった。

また、迅速で高感度に葉酸受容体を蛍光検出できるため、葉酸受容体に関わる幅広い生命現象の観察にも利用できる。

今回開発した蛍光試薬を使用する事により、手術中での小さな癌の検出を正確に測定することができるといった臨床医療に加え、生命科学の基礎研究にも貢献することが期待される。