アクアポリンとは細胞膜に存在する細孔をもった膜内在タンパク質である。水分子のみを選択的に通過させることができるため、細胞への水の取り込みに関係している。

いくつかのアクアポリンの遺伝子異常により先天性疾患が起こることは分かっているが、今回、胃癌の発生に深く関わっていることが報告された。

胃癌の発生原因としてピロリ菌の関与が最も重要な因子であるが、傷付いた胃の再生を担う組織幹細胞にアクアポリン5(AQP5)遺伝子が発現していることを突き止め、これによりヒトの胃組織幹細胞を特定することに成功した。

また,それらの正常胃組織幹細胞に遺伝子変異が蓄積することで、胃癌幹細胞に変化することが明らかにされた。

胃に存在する組織幹細胞ではLgr5遺伝子が発現することは知られていたが、ヒトにおける胃組織幹細胞の存在は明らかではなかったが、本研究では、ヒト胃幽門前庭部の組織幹細胞で膜タンパク質AQP5が特徴的に発現しており、さらに遺伝子変異の蓄積したAQP5陽性胃がん細胞は、癌幹細胞様の性質を持つことが明らかになった。

これより、胃癌の新規治療薬および新たな治療法の開発に大きく貢献することが期待される。

本研究成果は、英国科学誌『Nature』に掲載された。