膵臓癌は、生存率が最も低い難治癌であり、早期発見は難しいとされているが、1 cm未満の早期の段階で発見した場合は高い生存延長効果が得られる。

しかし、現状のCT検査、検査薬剤としてFDG3を用いたPET検査、MRI検査、超音波検査では、1 cm未満の早期膵臓癌を画像化することは困難である。

そのため、今回、PET検査薬剤として、膵臓癌など多くの癌細胞の表面に高密度に存在している上皮成長因子受容体(EGFR)に結合する抗体(セツキシマブ)を放射性同位体の銅-64(64Cu)4)で標識した64Cu-セツキシマブが開発され、本薬剤を腹腔投与すると膵臓癌に特異的に高集積することが明らかにされた。

また、感度と解像度を飛躍的に向上させた3次元放射線検出器を搭載することにより、従来のPET装置よりも高解像度の画像を撮像できるPET装置も開発された。

これらの技術を融合することにより治療にも有用な早期膵臓癌の画像診断法を開発でするために、まず、64Cu-セツキシマブを早期膵臓癌モデルマウスに腹腔投与し、3次元放射線検出器を搭載した独自のPET装置で撮像すると、マウス膵臓内の3 mm大の微小膵臓癌を明瞭に検出することができ、64Cu-セツキシマブと独自のPET装置を用いた画像診断法が早期膵臓癌を画像化する手法として有用であることが示唆された。

本画像診断法は、1 cm未満の早期膵臓癌を診断し、適切な治療計画を策定する上で役立つ技術となることが期待される。

本成果は、英科学誌Natureの姉妹誌である「Scientific Reports(サイエンティフィック リポーツ)」オンライン版に掲載された。