肝細癌は、肝臓の細胞が癌化して悪性腫瘍になったもので、肺やリンパ節、副腎、脳、骨などに転移することがある。

肝細胞癌の発生する主な要因は、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスの持続感染によります。肝炎ウイルスにより肝細胞の炎症・再生が長期にわたって繰り返され、慢性肝炎から肝硬変へと進行し、それに伴い遺伝子の突然変異が積み重なり、癌化すると考えられている。

また、ウイルス感染以外の要因としては、NASH(脂肪肝)が注目されている。年間約 2.7 万人が肝細胞癌で亡くなっており、以前のわが国の肝がんの原因はウイルス肝炎、とくに C 型肝炎ウイルス(HCV)が主であったが、HCV の排除が可能となり、非ウイルス性肝細胞癌(NBNC 肝癌)が増加している。しかし、NBNC 肝癌のスクリーニング検査はなく、新たなスクリーニング検査の開発が期待されていた。

そのために、血漿や血清中に浮遊している癌細胞や腫瘍特異的な遺伝子変化を検出するリキッドバイオプシー検査があるが、肝細胞癌診断のリキッドバイオプシー検査は実用化されていない。

遺伝子異常の一つとして DNA(遺伝子)メチル化があり、Epi proColon が肝細胞癌の診断に有用との報告もあるが、Epi proColon には約 4mL の多量血漿が必要となり定量性がない等の問題点があった。

今回、SEPT9 高感度メチル化解析法を開発し、微量検体(血清 0.4mL)で、かつ高感度な定量化に成功し、肝細胞癌に対する SEPT9 高感度メチル化解析法の有用性が報告された。

保存血清から DNA を抽出し、従来技術の 100 倍の感度で定量化が可能となるデジタル PCR を用いた高感度メチル化解析法にて SEPT9 メチル化レベルを定量すると、中央値は健常コントロール 0.0 コピー、慢性肝障害 2.0 コピー、肝細胞癌 6.4 コピーと肝細胞癌患者で有意に上昇を認め、検査感度 63.2%、特異度 90.0%が得られた。

肝細胞癌の進展(BCLC ステージ 0/A、超早期/早期肝細胞癌;ステージ B、中等度肝細胞癌;ステージ C、進行肝がん)に伴い陽性率は上昇したが、ステージ 0/A でもそれぞれ41.7/58.0%と高い検出感度を示した。

また NBNC 肝癌の検出感度も 66.7%と、ウイルス肝炎関連肝癌の検出感度とほぼ同様の結果が得られた。

この新たなリキッドバイオプシー検査は、簡便かつ微量検体測定可能で低コストの検査法であり、NBNC 肝癌のスクリーニング検査としても有用と思われ、今後、実用化に向けた研究を展開が待たれる。