細胞内部では、液-液相分離によって、マイクロサイズの微小な液滴が形成されており、その液滴は、遺伝子の転写制御、細胞小器官の形成、抗ストレス刺激など、細胞機能の制御に重要な役割を担っている。

一方、核酸やタンパク質などの生体高分子は、コードされた情報が塩基配列やアミノ酸配列に存在し、この情報により機能すると考えられている。

そのため、生体分子の配列の設計を適切に行えば、液-液相分離のような複雑な現象を制御し、形成された液滴に任意の機能を実装することが期待できる。

また、DNAにおける4種類の塩基の配列を人工的に設計することで、生命の遺伝情報を担う二重らせんの形成を制御することができる。

今回、DNAナノテクノロジーである技術を応用し、DNAが持つ可制御性と生体親和性を巧みに利用して、細胞内で生じる液-液相分離のような物理現象を人工的に制御するという方法により、DNA液滴の融合・分裂、タンパク質の捕捉などの動的挙動の制御を実現することが報告された。

これにより、薬剤送達システムや医療用分子ロボットへの応用が期待でき、また人工細胞や人工細胞小器官の構築を通して、原始細胞の起源や、細胞核での遺伝子制御原理などの解明にも貢献できると思われる。

本研究成果は、科学雑誌「Science Advances」のオンライン版で公開された。