従来、大腸癌術後には、病期(ステージ)から推定される再発リスクに応じて、再発を予防する目的で術後補助化学療法が標準的に行われてきた。

しかし、薬の効果や副作用に個人差があり、特に末梢神経障害が後遺症として残ることが問題であった。

今回、国立研究開発法人国立がん研究センター東病院により、大腸癌術後症例を対象に、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を検査するリキッドバイオプシーによるがん個別化医療の実現を目指すプロジェクト「CIRCULATE-Japan(サーキュレートジャパン)」開始された。

CIRCULATE-Japanは、産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業「SCRUM-Japan(スクラム・ジャパン)」の基盤を活用し、術後微小残存病変を対象に、国内外約150施設(台湾1施設を含む)が参加する、世界最大規模の医師主導国際共同臨床試験が実施される。

根治的外科治療を予定している大腸癌症例約2,500名を対象に、症例毎にがん由来の遺伝子異常を同定し、症例個々の遺伝子パネルを作製後、定期的に血液を採取して、その遺伝子異常が存在するかが調査される。

本プロジェクトでは、米国Natera社が開発した高感度遺伝子解析技術「Signatera(シグナテラ)」アッセイを用いることで、症例毎により高精度に術後の再発リスクを推定することが期待される。

CURCULATE-Japanを通してリキッドバイオプシーによる再発リスク評価精度とその臨床的有用性が示されれば、術後補助化学療法の効果がより期待される症例のみを選別することが可能となり、不要な治療を避けることで副作用や後遺症を軽減することが可能となる。

また、本検査は、非侵襲的で身体に負担の少ない採血で繰り返し測定可能となるため、癌の再発をより早期に発見できることが期待される。

本研究により得られたがんゲノム情報および臨床情報は、大規模データベースとして統合され、新たながん診断・治療薬の研究開発に役立てられる。

これにより、新しい臨床研究開発基盤に相応しい新たな支援体制が構築され、最新のリキッドバイオプシー技術を用いることにより、抗癌剤による術後補助化学療法が必要な患者さんに適切な治療法の選別が可能となりする画期的な研究であり、癌治療全体のパラダイムシフトを日本が世界をリードして実現することが期待される。