本邦における前立腺癌は、男性、特に高齢男性が罹患する癌種として非常に多くみられる。

進行性前立腺癌においては男性ホルモン作用を抑制するホルモン療法を行うが、治療の継続とともに効果が低下し、再発、難治化して死の転機となり、本邦での年間死亡数は1万人を超える。

再発した前立腺癌においては、男性ホルモンであるアンドロゲンのシグナルが亢進し、アンドロゲン受容体の異常増加が発生するためである。

今回、手術摘出された前立腺癌組織のうち、ホルモン療法の効果低下により再発した前立腺癌組織中に発現している遺伝子の病気の進行による変化を次世代シークエンサーにより解析した結果が報告された。

これにより、ホルモン療法の効果が低下した前立腺癌において特徴的に増加する遺伝子群を見出し、タンパク質の情報を有しないRNA(非コードRNA)群を同定した。さらに、非コードRNA群はRNAの成熟を促すタンパク質の細胞内での働きをコントロールする役割を有し、癌の悪性化に作用していることを明らかにし、ホルモン受容体の活性化をもたらす仕組みを発見した。

今回発見した新たなRNA群が、前立腺癌細胞内でのRNAの成熟の仕組みの幅広い異常に関与し、ホルモン療法の効果低下につながると考えられる。

また、タンパク質を生成しない非コードRNAは、従来のタンパク質に対する治療法と異なり、新しいクラスの治療法の対象として期待される。

本研究は、Nature Publishing Group発行のオンライン国際科学雑誌「Communications Biology」に発表された。