腫瘍組織には、癌細胞や腫瘍血管や癌関連線維芽細胞(CAF)など様々な種類の細胞が存在し、癌微小環境が構成され。サイトカインを介して相互作用をし、癌の進展を誘導している。

特に、癌組織内で高発現しているトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、上皮癌細胞から線維芽細胞などの高い転移能を有する間葉系細胞への分化転換(上皮間葉移行:EMT)のみならず、血管内皮細胞からCAFへの分化転換(内皮間葉移行:EndMT)を誘導する。

今回、複数の種類のヒト血管内皮細胞を用いてTGF-βによりCAFへと分化転換する過程におけるTNF-αの役割について解析結果が報告された。

血管内皮細胞はTGF-β存在下で培養すると間葉系細胞の性質を獲得するが、TNF-αを添加するとTGF-βによるEndMTはさらに亢進した。

さらに、血管内皮細胞をTGF-βとTNF-αで処理することで分化転換するCAFにおいて、TGF-βシグナルが長時間維持されることが明らかになった。

TGF-βファミリーメンバーの発現に対するTGF-βとTNF-αの効果を検討すると、TGF-β2の発現が上昇していることが示された。

これにより、TNF-αはTGF-βによるEndMT誘導をTGF-βシグナルの増強により亢進することが示唆された。

本研究の成果により、TGF-βとTNF-αが協調することで、血管内皮細胞からのCAFの形成を制御していることが示され、血管内皮細胞由来のCAFがTGF-β2を分泌し、癌細胞のEMTを誘導することにより、癌の悪性化を亢進することが示された。

今後、腫瘍組織におけるTGF-βシグナルを抑制することで、癌微小環境ネットワークを標的とした新たな癌治療法の開発へ応用されることが期待される。

研究成果は、国際科学誌Cancer Scienceにオンライン版で発表された。