肺癌は、本邦における癌死亡原因第一位の癌であり年間約8万人が死亡する。

肺癌の約25%は、上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor: EGFR)遺伝子の変異が原因であるEGFR 変異肺癌であり、変異した EGFR からの生存シグナルで増殖を続けるため、変異 EGFR の機能を抑制するオシメルチニブという分子標的薬が有効である。

ただ、オシメルチニブは、約8割の EGFR 変異肺癌に効果が認められ縮小化するが、一部の癌細胞が耐性を持った抵抗性細胞として生存し再発することが課題である。

今回、AXL 低発現の EGFR 変異肺がん細胞が耐性を有するメカニズムは、インスリン様増殖因子 1 受容体(insulin-like growth factor-1 receptor: IGF-1R)のタンパク質量を増やし、増加したIGF-1R が生存シグナルを補うことにより、癌細胞の一部が抵抗性細胞として生存することがわかり、さらに、抵抗性細胞ではオシメルチニブ処理に応答して、転写因子である FOXA1 が IGF-1R の転写を亢進して IGF-1R のタンパク質量を増やすことが明らかになった。

動物モデルでは、オシメルチニブに短期間IGF-1R 阻害薬を併用することで腫瘍を消失させ、治療終了後も再発をほぼ完全に防止できることも確認された。

これらにより、AXL 低発現の EGFR 変異肺癌患者に、治療当初から短期間 IGF-1R阻害薬を分子標的薬に併用することで、腫瘍を縮小させ、根治あるいは再発までの期間を伸ばすことが期待される。

また、FOXA1 の機能を抑制する薬剤はインスリン受容体には影響せず IGF-1R のみを抑制できる可能性があり、今後 FOXA1 阻害薬の開発が待たれる。

本研究成果は、科学雑誌『NatureCommunications』に掲載された。