非浸潤性乳管癌(DCIS)は、初期乳癌であるが、乳管の内部で癌細胞が増殖し、放置しておくと悪性度の高い浸潤性の癌として進行していくため、早期発見が重要とされている。

癌の病理診断では、染色工程に手間と時間がかかり、また染色しても病巣自体が浸潤性乳管癌(IDC)と類似していることから、正確な識別が困難である。

テラヘルツ波は、周波数にして 0.1~10 テラヘルツの電磁波を指し、光と電波の中間帯に位置し、特にイメージングでは、X 線とは異なり、物質を被曝させずに可視化することが可能なため、安心安全な評価技術として注目されている。

そのため、テラヘルツ波を利用した乳癌組織のイメージングは、癌組織と正常組織を、染色を行わずに識別できるため、新たなオンサイト診断技術としての応用が期待されているが、テラヘルツ波の波長が光に比べて数百倍長いため、その回折限界の影響から、比較的小さな早期の乳癌である非浸潤性乳管癌(=DCIS)を識別することが困難であった。

今回、レーザーを非線形光学結晶に照射した際に局所的に発生するテラヘルツ波光源と癌組織を直接相互作用させてイメージングを行う独自のイメージング技術の開発がなされ、0.5ミリ未満の DCIS の鮮明なテラヘルツイメージングに初めて成功したと報告された。

今後は、染色せずに迅速かつ高精度な癌の病理診断を提供するオンサイト診断実現に向けたテラヘルツイメージングは、乳癌のみならず様々な種類の癌の早期発見のための病理診断を強力にサポートできることが期待される。

本研究成果は、英国科学誌 IOP Publishing 「Journal of Physics: Photonics」(オンライン)に掲載された。