食道粘膜から発生する食道癌の 90%は扁平上皮癌であり、近年の内視鏡検査の普及・発展により早期で発見されることも増え、ESDなどの進歩により内視鏡的切除も可能になっている。

しかし、進行性食道癌の場合は、頸部リンパ節転移や遠隔転移を伴っていることも多く、手術・化学療法などを含む集学的治療が行われるが、効果的な治療成績ではなく、新規治療方法の開発が期待されている。

従来より、食道扁平上皮がん細胞自身が分泌するIL-6ファミリーサイトカインの一員である白血病阻止因子(leukemia inhibitory factor;LIF)が受容体gp130の下流でJAK-STAT3経路を活性化することにより食道扁平上皮癌の憎悪させることがわかっている。

今回、上記に加え、ILFがSrcファミリーキナーゼ(Src family kinase;SFK)- Yes関連タンパク質(Yes-associated protein;YAP)経路も活性化して、食道扁平上皮癌の進展を促進することがヒト食道扁平上皮癌由来培養細胞とマウス実験で明らかにされた。

さらにSFK阻害剤とJAK阻害剤を同時投与することで癌細胞の増殖をほぼ100%抑制できることを確認した。

今後、SFK阻害剤とJAK阻害剤以外に、LIF-SFK-YAP経路を標的としたヒト食道扁平上皮癌治療法への応用が期待される。

本研究の成果は、米国学術誌『Molecular Cancer Research』(オンライン版)に公開された。