プラチナ製剤は抗がん作用を有するため、従来よりがん治療に使用されており、そのなかでもシスプラチンは有用な抗がん剤として知られているが、腎障害の副作用があり、慎重な投与が必要である。

今回、大規模医療データベースを用いたシスプラチン腎障害症例における併用薬の解析から、シスプラチン腎障害予防薬の候補として5つを抽出し、そのうち抗アレルギー薬であるジフェンヒドラミン(Diphenhydramine; DPH)についての報告がなされた。

尿細管培養細胞とマウスモデルの検討では、シスプラチンによる腎機能悪化、炎症性サイトカイン上昇、酸化ストレス・アポトーシスの増加は、DPHにより抑制された。

DPHの腎障害抑制作用はヒスタミン受容体抑制に加えて、腎臓へのシスプラチン取り込み抑制効果であることがわかり、またDPHは、抗腫瘍効果に対して影響せずに、腎障害を抑制することが明らかになった。

このデータをもとに、初回シスプラチン投与症例約1500名を調査すると、シスプラチン投与前にDPHを投薬した症例では、シスプラチン投与による急性腎障害が抑制されていた。

DPHは、既存の抗ヒスタミン薬であり、がん治療においても併用されており、新たなプロトコールを構築する必要もないため、腎障害予防の支持療法の確立に寄与できると考えられ、がんサバイバーの生活の質と生命予後の改善につながることが期待できる。

本研究成果は、国際腎臓学会の公式学術誌「Kidney International」に掲載された。