乳癌の約70%は、エストロゲン受容体(ER)陽性 HER2 陰性であるが、術後5年間の内分泌療法を行うことが標準となっている。

しかし、術後長期にわたる再発リスクが報告されているなど、未だ予後に改善の余地があります。

S-1 などの経口フルオロピリミジンは、転移性乳癌の疾患進行を抑制する役割を果たすことがわかっており、今回、ER 陽性 HER2 陰性原発性乳癌患者を対象に、標準的な術後内分泌療法に S-1 を併用することで予後における改善についての臨床試験結果が報告された。

本邦139 施設において多施設共同ランダム化非盲検比較第 III 相試験を実施し、対象は、ステージI~IIIB の浸潤性乳癌を有する 20 歳~75 歳の女性とした。

5 年間の標準的術後補助内分泌療法を単独で受ける症例群と、標準的術後補助内分泌療法に1年間の S-1 投与を併用して受ける症例群を比較した。

主要評価項目は、浸潤性病変のない生存(iDFS)としました。

追跡調査期間中央値は 52.2 ヵ月 (四分位範囲は 42.1~58.9)であり、内分泌療法単独群および S-1 併用群に iDFS イベントが発生した。

標準的術後補助内分泌療法に S-1 を併用することにより浸潤性病変の発生のリスクが 37%低減された。

これらより、S-1 と内分泌療法の併用は、中等度~高度の再発リスクを有する ER 陽性かつ HER2 陰性の原発乳癌患者における有望な治療オプションになることが明らかになった。

今後は、さらに長期にわたる観察によりS-1 併用の生存率への寄与を評価する必要があると考えられる。

本研究成果は、英国科学誌「The Lancet Oncology」にオンライン掲載された。