腎臓癌には腎細胞癌と腎盂癌があり、腎臓癌患者数は増加傾向にあり、男女とも50歳代から増えており、社会の高齢化とともに今後も患者が増えるとみられている。
今回、細胞や細胞小器官などの生体膜に付いているタンパク質分子で、ヒトの細胞内でアミノ酸を運ぶ役割をしている膜タンパク質のひとつである「アミノ酸トランスポーターLAT1」が腎細胞癌細胞に特異的に発現し転移にも関わるタンパク質であることが英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表された。
腎細胞癌の手術を受けた患者の癌組織と正常組織をそれぞれLAT1に反応する抗体で染色すると、癌組織にはLAT1が多く発現しており、癌組織でのLAT1の発現が多いほど転移や再発が多いことが分かり、このタンパク質が腎細胞癌初の腫瘍マーカーや抗癌剤治療に使用できると期待されている。
実際、LAT1の働きを抑える阻害剤(JPH203)を腎細胞癌の細胞に投与する実験をした結果、癌細胞の増殖が抑制されることが明らかになった。
今後、臨床試験を経て腎細胞癌を対象とした腫瘍マーカーや抗癌剤治療の実用化に向けた研究が進められる。