細胞内DNAは、アデニン(A)グアニン(G)チミン(T)シトシン(C)の4種類の塩基により構成される。AとT、GとCがそれぞれ塩基対を形成しながら配列していくため、無数のDNAが存在することになる。
遺伝子変異とは、本来の塩基配列に異常が生じるために発生する現象であり、突然変異とエビジェネティクス変異がある。
突然変異は、タバコや紫外線などのさまざまな外的要因(発癌要因)によって引き起こされる変異のことである。癌遺伝子や癌抑制遺伝子を記録したDNAに異常が発生した場合、癌遺伝子の活性化や癌抑制遺伝子の不活性化が起こる。
すなわち、前述の塩基のひとつが他の文字に置換したり、欠失した場合、まったく別の意味不明な暗号が伝達されることになる。また、染色体欠失が起きた場合には、暗号自体が消失してしまうことになる。すなわち、突然変異による癌化を発生させることになる。
一方、エビジェネティクス変異とは、DNAだけの性質に規定されることなく遺伝子の発現パターンや 細胞の性質を確立・維持・継続させ、さらには消去・削除することで多様性を獲得する仕組みを利用している現象に異常をきたしたものであり、後天的に決定される遺伝的な仕組みと呼ばれる。
細胞が分裂した際に新しくできた細胞への伝達に異常がある場合がある。これがエピジェネティック変異であり、DNAメチル化とヒストン修飾の変化である。
DNAメチル化も、塩基配列と同様、本来のまま受け継がれるが、DNAメチル化の変化は多くの癌において認められ、多段階発癌のステップとして関与している場合もあると考えられている。
現在、これらの遺伝子異常を応用して、癌の診断や治療に利用する研究が進んでいる。