人間の眼球は、網膜のドーム型形状と膨大な数(1平方センチメートル当たり約1000万個)の視細胞を有するため、広い視野を持ち、解像度が高く、光に対して非常に敏感である。

こうした特徴を模倣した人工眼球を再構築することが、ロボット工学の分野や視覚補綴装置の開発で関心を集めている。しかし、人工網膜の作製は、網膜の形状と組成のために困難を極めている。

今回、Nature に掲載された、人間の眼球の構造を模倣した人工眼球について記述論文では、新たに設計された半球形の人工網膜を示している。

この人工網膜には、人間の眼の視細胞を模倣した光感受性ナノワイヤーが高密度に充填されており、このナノワイヤーは、有望な太陽電池材料であるペロブスカイトでできている。

この人工網膜は、人工眼球で捉えた画像(「E」「I」「Y」という文字)を再構成して、これらの文字を「視認する」ことができた。

概念実証のために作製された人工網膜は、ナノワイヤーアレイがわずか100ピクセル(1ピクセル当たり3本のナノワイヤー)で構成されているため、解像度が低いが、ナノワイヤーの密度を人間の眼の視細胞の10倍以上に高めることにより、新たに設計された人工網膜は人間の眼より優れた解像度を実現できる可能性がある。

この生体模倣型の眼球は、高い画像解像度を実現できる可能性があり、ロボット工学や科学機器への応用が期待される。