ヘリコバクター・ピロリ菌は、主に幼少時の経口感染により胃粘膜内に定着し、長年にわたり胃粘膜を侵食し、萎縮性胃炎を引き起こし、やがて胃癌の発生母地となる。
胃癌患者のほとんどが、ピロリ菌感染または感染既往を有し、除菌により胃癌発生の確率は減少する。
このように、胃癌には,ヘリコバクター・ピロリ菌感染が関与していることが知られているが,感染がどのように胃癌の発生を促進するのかは,不明である。
今回、ヘリコバクター・ピロリ菌感染により引き起こされる慢性炎症反応により分泌されるサイトカイン分子の一つであるインターロイキン1(IL-1)の刺激により,胃粘膜上皮細胞でmiR-135b発現が誘導されることが明らかになった。
miR-135bは,胃癌細胞の増殖抑制に作用するFOXN3やRECKなどの標的遺伝子の発現を抑制することで,胃粘膜上皮細胞の増殖を亢進し,胃癌細胞の浸潤などの悪性化にも関与すると考えられる。
これらの知見は、将来,miR-135bを胃癌の早期診断のバイオマーカーとして使用したり、miR-135bを標的とした新規予防・治療法の開発に活用されることが期待される。