DNAは周期的な2本鎖の構造を有する配列特異的な分子集合である。
DNAナノテクノロジーとは、DNAのその個性的構造を使い、ナノスケールの構造体を自在に設計・作成する技術を基盤とした革新的な分子テクノロジーである。
この技術により、柔軟に構造体の作成ができ、機能化が容易であるため、ナノサイエンス応用を中心に、医療などの多方面に応用されつつある。
最近、特に欧米を中心に急速に発展しているベンチャー的学際分野で、コンピューターサイエンス、材料化学、応用物理学、細胞生物学、生物物理学、工学とさまざまな分野で研究されており、研究成果はNature, Scienceなど世界のトップ科学誌に数多く掲載されている。
例えば、4方向に分岐するDNA構造(Holiday Junction)を自己集合させることで格子構造を作成する方法やDNAの自己集合によるキューブ構造などの3次元構造の作成などがある。
また、2本の2本鎖DNAを2箇所で結合させた構造体(Double crossover)を用いて作成したタイル状のDNA構造体を自己集合させることにより、原子間力顕微鏡(AFM)でも観察できるサイズの2次元集合体の作成もある。
このブレークスルーにより、初めて、DNAの自己集合から構造体を作り上げる「DNAナノテクノロジー」の分野が誕生した。
それにより、DNAの自己集合によって作成されるナノスケールの2次元ナノ構造体であるDNAオリガミが開発され、100 nm程度の構造体の自在な設計と作成を行うことが可能となった。
そして、2本鎖DNA同士の幾何学的な結合を平面方向に対して垂直方向を加えることで3次元のDNAオリガミ構造体の構築方法も確立された。
この技術を利用し、DNAオリガミを膜とするDNAナノ構造で構成される人工細胞膜の構築が開発され、DNAナノ構造の形状や機能をデザインするだけで、膜カプセル自体を制御することができるため、機能性カプセルの開発や細胞型分子ロボットの構築に利用が可能となる。