膵臓癌リスクと関連する遺伝子を探索する大規模な「全ゲノム関連解析」研究は欧米では共同研究ベースで実施されてきたが、アジアにおいては充分な検討はなかった。

今回、日本膵臓がん研究コンソーシアム(Japan Pancreatic Cancer Research (JaPAN) consortium)が主体となり、各種大学等の研究機関と共同で、約4000名の膵臓癌患者と約41,500名の健常者を対象に全ゲノム関連解析研究を実施され、16番染色体に位置するGP2 (glycoprotein2)遺伝子上に存在する遺伝子多型rs78193826が膵臓癌リスクと関連することが明らかになった。

この遺伝子多型は、塩基配列がCからTに置き換わる事でアミノ酸配列が異なるGP2タンパクが出来る結果、GP2タンパクの働きが変化して膵臓癌リスクが上昇する可能性が考えられ、また、この遺伝子多型は日本人を含む東アジア人では認められるが、西洋人ではほとんど存在せず、東アジアにおける膵臓癌リスクと関連する事が示唆された。

さらに、膵臓癌組織で高頻度に認められるK-ras遺伝子変異時に発現が低下する遺伝子群が、本遺伝子多型を導入した場合にも同様に発現が下がることが示唆され、GP2遺伝子多型はK-ras遺伝子変異と同様のメカニズムで膵臓癌の発生に関与している可能性が考えられた。

これらの結果は、東アジア人における膵臓癌発癌のメカニズムの解明と、その知見に基づく膵臓癌の予防法開発につながる事が期待される。

本研究は、シュプリンガーネイチャー社の発行するNature Communications誌に掲載された。