筋層浸潤型癌膀胱がんは、進行率と再発率が高いため、通常は膀胱を全て摘出し、転移の可能性のあるリンパ節を同時に切除する。

しかし、患者への負担が大きく、手術後の生活の質 (QOL) の低下を招くため、安全かつ効果の高い新たな治療法が求められている。

また、癌の増殖機構の一つに、上皮系細胞が間葉系細胞の性質を獲得する、上皮間葉転換 (Epithelial Mesenchymal transition;EMT) という転移に関与する機序があり、膀胱癌細胞は他の癌に比べて、EMTによって高い転移能を獲得する。

今回、神戸大学大学院保健学研究科と台北医学大学らの研究グループにより、膀胱癌の悪化におけるADAM9の関与が調査され、ADAM9が膀胱癌細胞におけるEMTを予防するための新しい治療標的になり得るかの検証がなされた。

細胞の接着に関わるADAM9というタンパクが膀胱癌の増悪・進展に関与しており、癌の悪性度が高い方がADAM9タンパクの発現が多いことを発見した。

今後はADAM9をターゲットにした、癌の予後予測や新たな治療法の開発による臨床への応用が期待される。

この研究成果は、Biomoleculesに掲載された。