印刷工場において胆管がんが多発していることが報告され、その原因物質として、DCPが特定された。

塩素系有機溶剤であるDCPは、工場内でインクの洗浄剤として大量に使用されており、当時はその発がん性については認知されておらず、DCP曝露による胆管がん発症は、がん周囲の組織に炎症性の変化が見られるなど一般的な胆管がんとは異なる発がん過程を示すが、その発症機序はいまだ解明されていない。

今回、東京理科大学薬学部と静岡社会健康医学と自治医科大学環境予防医学講座らの研究グループは、職業性胆管がんの原因物質である1,2-ジクロロプロパン(DCP)による発がん過程を解明するべく、胆管細胞と免疫細胞であるマクロファージを共培養し、DCP曝露により発現が変化した遺伝子群を網羅的に解析した。

その結果、胆管細胞では、DNA修復に関与する遺伝子群の発現が上昇し、マクロファージでは、細胞周期に関与する遺伝子群の発現が上昇することを発見した。

本研究では、マクロファージと共培養することにより、生体内での炎症環境をin vitroで再現しており、本実験系を利用することにより、未知の発がん物質を検出することができ、新しい職業がんの発生を未然に防ぐことが可能となる。

本研究成果は、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。