がん悪液質は、末期がん患者の多くで認められる体重減少(特に筋肉量の減少)を特徴とした代謝異常症候群であり、患者のQOLを著しく悪化させる。

しかしながら、がん悪液質の治療薬は日本でのみ承認されたグレリン様作用薬・アナモレリンしかない。

がん悪液質は筋肉量の減少が顕著であるため、筋肉消耗を促すミオスタチンの作用を抑制することで、がん悪液質誘導性の筋肉消耗を改善する治療薬の開発が行われてきた、副作用などの問題により開発が中止され、臨床応用には至っていない。

今回、東京薬科大学 生命科学部 幹細胞制御学研究室と同大学 薬学部 薬品化学教室らの研究グループは、新規開発したミオスタチン阻害ペプチド(MID-35)を用いて、がん悪液質モデルマウスの治療効果を検証した。MID-35は単独でがん悪液質による筋肉消耗を阻害するが、アナモレリンとの併用治療により食餌摂取量と筋肉消耗を効果的に改善できることを発見した。

これにより、がん悪液質患者の治療において食事摂取量増加と筋肉消耗阻害が治療ポイントになると期待される。

本研究結果は、科学誌「Cancer Science」に掲載された。