老化によりT細胞免疫が低下するため、高齢者にてCOVID19ワクチンが効きにくく、また、がんの発症率が上がる。

スペルミジン(spermidine: SPD)は生体内ポリアミンであり細胞の生存、増殖、ミトコンドリアの機能維持に必須である。

そのため、細胞内には豊富に含まれているが、加齢とともにその生体内濃度は低下する。

今回、京都大学医学研究科附属がん免疫総合研究センター長らの共同研究グループは、SPDが若齢T細胞と比較して、老化T細胞において減少し、エネルギー産生や脂肪酸酸化等のミトコンドリア機能の低下の原因になっていることを明らかにした。

老化マウスではミトコンドリア不全のため、PD-1阻害抗体治療が無効になっているが、SPDを補充(併用)することで、がんに対する免疫が回復することを示した。

SPDは試験管内実験にて短時間でミトコンドリア機能を上昇させた。

生化学的解析によりSPDはミトコンドリアに存在する脂肪酸酸化を担う酵素(MTP)に直接結合し、その酵素活性を上昇させることが明らかになった。

これらの結果は、老化個体にて免疫力が低下する一因を説明する発見であり、今後がん治療や自己免疫等の免疫関連疾患の機序解明・治療法開発が期待される。

本研究成果は、科学雑誌「Science」のオンライン版に公開された。