消化器癌をはじめとした様々な癌種において、バイオマーカーの発展は目覚しいものがある。
リキッドバイオプシーの一つである血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells (CTC))の分野においては、現在,さまざまな分析装置が考案されており、採取された血液中から定められた判定規準に従って選択したCTCを測定し、癌患者の生存率や無増悪生存率と対応させた分析結果が多数報告されている。その末梢血中には、CTC以外に腫瘍残骸や破片が検出され、さらに死滅によって放出されるCell Free DNA (cfDNA)やcirculating tumor DNA (ctDNA)も発見されている。
cfDNAは、リキッドバイオプシーの中で、CTCと並び血液中のバイオマーカーとして研究が進められている一つであり、ヒト血液中に166bpを中心に332bp、498bpなどのサイズで存在している細胞外遊離DNA断片のことを指し、このcfDNAは細胞がアポトーシスなどの細胞自然死を引き起こす際に、血中に放出されたものと考えられている。cfDNA(cell free DNA)の多くは、血球系細胞の死滅に由来するDNAといわれており、健常人にも存在する。
一方、発生した癌細胞を生体内の免疫機構によって破壊したり、自然死(アポトーシス)を引き起こしたり、また血中に漏れ出した循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells )が何らかの影響によって血中で破壊されたりすると、癌細胞のゲノムDNAが血中に漏出することになる。このDNAはcfDNAと区別するために、特別にctDNA (circulating tumor DNA)と呼ばれている。
癌患者の血漿から得たこれらのcfDNAやctDNAを測定することによって、腫瘍由来のゲノムDNAを解析し、原発癌や転移癌の比較などへ応用しようという動きが活発である。一方で、癌の変異を見出すことで治療薬に対する耐性の獲得が知られるようになり、また、治療の経過に伴う変異の増減から新たな治療薬に対する効果の有無を判定するなど、臨床に直結する変異検出の応用事例が蓄積されている。
今後、cfDNAやctDNAの測定は、胃癌や大腸癌のみならず多くの癌種における治療に大きな変革をもたらすことになると考えられる。