ドラッグデリバリーシステム(DDS)
⾎液中の薬物は、投与された量の⼀部しか標的とする癌細胞に到達できず、⼤部分は正常細胞に作⽤して副作⽤を引き起こします。
そこで、狙った癌細胞にだけ薬物を集中的に送達するための⽅法が必要となります。このように、必要な部位に必要な量を必要な時間だけ作⽤させるような投与システムをDrug Delivery System(DDS:ドラッグデリバリーシステム)と⾔います。この実現にはナノサイズの薬物輸送体の開発が重要な課題となります。
10nm 以下の粒⼦は腎臓から排出されやすいため⾎中に⻑く留まらず、400nm以上では体内の監視機構(網内系)に捕捉されてしまいます。逆に、10nm~400nmであれば体内から排除され難く、⾎中を循環し続けます。さらに、癌組織では、正常組織と⽐べて⾎管壁の隙間が粗く、約100nm程度の⽳が開いているため、10nm~100nmの⼤きさの薬物輸送体であれば、正常組織には影響せず、癌組織にのみ漏出して患部に蓄積されます。(EPR効果)
したがって、DDS 製剤には10nm以上かつ100nm 以下のサイズに制御することが求められ、当院の遺伝⼦カプセルは平均30nmであり、この条件を満たすDDS 製剤です。
このように、薬物輸送体のサイズを最適に設計することで、薬物の副作⽤を最⼩限に留め、効果を最⼤限に引き出すことが出来ます。