EPR効果(Enhanced permeation and retention effect)
血管には、血管外の細胞に酸素や栄養分を取り込むための隙間が空いています。
正常血管ではこの隙間は非常に小さく、低分子物質は血管壁を通過しますが、高分子物質は通過することができません。
腫瘍組織の血管では、腫瘍の増殖に伴う血管新生により形成されるため分岐が多く血管壁が正常血管よりも粗造になっており、100~200nm程度の隙間が空いています。
この違いを利用して、100nm以下のサイズに粒径が制御された微粒子は、正常組織へは漏れ出さず、腫瘍血管からのみ癌組織に到達して患部に集積させることが可能です。これをEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)と言い、1986年に熊本大学の前田教授らによって提唱された重要な概念です。すなわち、100nm以下の微粒子に薬剤を担持させて癌患者へ投与することにより、正常組織には影響を及ぼさず、癌組織に対してのみ効果を発揮することができるようになります。
当院のmicroRNA封入ナノ粒子は平均粒径約30nmであり、腎臓からも排出され難く、EPR効果によって癌組織への集中送達・蓄積が可能なDDS製剤です。
このように、薬剤をナノ粒子に封入することでDDS製剤としての効果を飛躍的に高く発揮することができることから、この原理を利用したDDS製剤の開発が活発に行われています。