小細胞肺癌は、全肺癌の約15%を占め、一次化学療法および放射線療法に対する奏効率が高いが、広範な病期を有する患者は最終的に再発する。
また、再発性または難治性の小細胞肺癌に対する治療法の選択肢は限られており、診断から5年以上生存した患者は皆無に近い。
デルタ様リガンド3(DLL3)は、小細胞肺癌および他の神経内分泌腫瘍において高度に発現されるが、正常組織においては最低限発現される阻害性Notchリガンドである。
そのため、DLL3は小細胞肺癌における潜在的な治療標的として期待されている。
今回、小細胞肺癌の治療のために開発されているDLL3特異的療法について、抗体-薬物コンジュゲートロバルピツズマブテシリン、二重特異性T細胞エンゲージ免疫腫瘍治療AMG 757、およびキメラ抗原受容体T細胞療法AMG 119。デルタ様タンパク質3(DLL3)を分子標的とする小細胞肺癌に対する近赤外光線免疫療法の開発に成功した事が報告された。
小細胞癌患者の85%以上における再発難治性小細胞肺がんは悪性度の高い腫瘍で、治療の選択肢は限られている。
最近、小細胞肺癌に対する新たな治療標的として、DLL3 という細胞表面にあるタンパク質が注目されており、DLL3を標的とする Rova-T という薬剤が開発され、臨床試験が行われてきたが、効果および副作用の問題で開発中止となっている。
近赤外光線免疫療法は、癌細胞が発現するタンパク質を特異的に認識する抗体と光感受物質の複合体を合成し、その複合体が細胞表面の標的タンパク質に結合している状態で近赤外光を照射すると細胞を破壊する。
抗ヒトDLL3 抗体を用い、光感受物質の複合体を合成し、細胞および動物実験において、DLL3 を標的とする小細胞肺癌に対する近赤外光線免疫療法の効果が証明された。
本研究は、学術出版社Cell PressとThe Lancetから共同発行されている科学誌「EBioMedicine」(電子版)に掲載された。
今後、臨床において、小細胞肺癌に対する新たな治療法として顕著な効果が示されることが期待される。