卵巣癌は卵巣に発生した癌で、約90%は卵巣の表層を覆う細胞に由来する上皮性腫瘍であり、初期はほとんど自覚症状がなく、下腹部にしこりが触れる、腹部膨満感などの症状から卵巣癌が発見されることもあるが、すでに癌が進行していることも少なくない。

進行すると、腹腔内に癌細胞が広がる腹膜播種が生じやすくなり、また、大網、大動脈周囲や後腹膜リンパ節、大腸、小腸、横隔膜、脾臓などに転移するため、婦人科領域における最も予後不良な癌の一つである。

今回、進行卵巣癌の悪性化に関わるメカニズムを解明し、腹膜環境から新たな化学療法に対する抵抗性の原因が明らかにされた。

腹膜播種における卵巣癌細胞の増殖を支える腹膜に着目し、腹膜の特徴的な構成要素としての腹膜中皮細胞に焦点を当て、卵巣癌細胞との間で行われる異種細胞間のクロストークと化学療法への抵抗性の関連について検討している。

卵巣癌の腹膜播種のメカニズムは、腹膜中皮細胞が腫瘍内へと侵入し、TGF-β1という癌細胞由来の因子により間葉転換を引き起こすことで、卵巣癌に関連する腹膜中皮細胞(OCAM)へと変化することが明らかになった。

また、OCAMと接することで、卵巣癌細胞はAktシグナルの活性化を通してプラチナ製剤への抵抗性を獲得することも発見された。

こうしたメカニズムの要因となるOCAMを治療の標的とすることは、今後、腹膜播種を伴う進行卵巣癌における新たな治療法になると考えられる。

これらは、国際医学総合誌「International Journal of Cancer」(電子版) に公開された。