粒子線治療は放射線治療の一種で、癌病巣をピンポイントに狙い撃ちでき、従来の放射線治療に比べ、正常組織へのダメージを低く抑えられる特長がある。
しかし、隣接臓器への被曝による問題があり、その副作用解消を目的としてネスキープが開発された。
ネスキープは腹腔内もしくは骨盤内の悪性腫瘍に対する粒子線治療を実施する際に、悪性腫瘍に近接する消化管への被曝量を低減し、根治線量の照射を可能とする。
悪性腫瘍と正常臓器との間にネスキープを外科的に留置し、間隙を確保することで、粒子線治療を可能にし、数か月で、体内で有害物質を出さずに加水分解されるため、取り出すための再手術の必要もない。
このネスキープを難治性癌に使用する試みが進んでいる。
膵臓癌は早期発見が難しく、進行癌の場合、外部への浸潤や転移により予後が悪い難治性消化管腫瘍である。
切除不能な膵がんで粒子線治療が即開始できる症例は10%以下であり残りの手術不能例の40%の患者にネスキープを用いることで根治的な粒子線治療ができる。
この難治性膵臓癌に対し、ネスキープを膵臓癌と近接する消化管等の間に留置して間隙を確保することにより悪性腫瘍への根治線量の照射が可能となる。
今後、膵臓癌以外の難治性癌に対しても根治治療の対象として使用されることが期待される。