小児神経膠腫は、脳幹部や脊髄等中枢神経の中心部に発生することが多く、手術も困難であり予後は極めて不良である。
また、このタイプの神経膠腫では H3F3A 遺伝子の K27M 変異を認めることが多く、H3 K27M 変異型びまん性正中部神経膠腫(diffuse midline glioma,H3 K27M-mutant:以下 DMG)という名称がある。
今回、特徴的な H3F3A 遺伝子変異 パターンを示すDMG に対して全ゲノム解析を行い、H3F3A 遺伝子領域周辺の染色体構造に異常があることが発見された。
これらの腫瘍はそれぞれ異なるタイプの染色体の構造異常を示すが、いずれにおいても野生型 H3F3A 遺伝子をもつ染色体よりもH3F3A遺伝子をもつ染色体が優位になっていたことが確認された。
これらの腫瘍では変異型 H3F3A タンパク質(H3 K27Mタンパク質)の発現量が増加しており、特定のエピゲノム異常が、より強く誘導されてあり、また、この染色体構造の異常を有する腫瘍は増殖が早く、予後不良であることが明らかになった。
これらにより、今回の研究で H3F3A 遺伝子領域の染色体異常が DMG の予後不良の因子であることが初めて同定され、この染色体異常が予後不良に関わる機序を詳細に解明することで、DMG が悪性性質を獲得するメカニズムの解明につながる可能性がある。
本研究は、英科学誌「Acta Neuropathologica Communications」に掲載された。