癌細胞が生体内で増殖を続けるために、血管の伸長を促す信号分子を分泌して、新生血管を周囲に張り巡らせ、栄養を継続的に獲得する
癌細胞自身が血管網に似たネットワーク構造を形成して、血管に協調的にアクセスしたり、得られた栄養を癌細胞の間で循環させたりすることが明らかになっている。
しかし、がん細胞が形成するネットワーク構造を試験管内で再現することは難しく、癌細胞による構造形成の仕組みは理解されていない。
今回、マトリゲル上で細胞を培養することにより、癌細胞集団が自己集合し、ネットワーク構造を形成することが発見された。
顕微鏡下では、癌細胞がネットワーク構造を形成するために、細胞間に働く二種類の力が重要であることが分かった。
一つは、離れた細胞の間に働く遠隔力により、細胞集団は細胞密度が高い方向に移動して集合体を形成することであり、もう一つは、物理的に接触した細胞の間のみに働く接触力により、集合体同士が連結される結果、特徴的なネットワーク構造が造り出されることが明らかになった。
今回、癌細胞による構造形成において遠隔力と接触力の両方が重要であることが分かり、細胞間に遠隔力や接触力が働くことにより複雑な生命現象を理解することが可能となる。
本研究成果は、米国科学誌「Biophysical Journal」に掲載された。