エクソソームは細胞から分泌される直径50-150 nmの顆粒状の物質で、その表面は細胞膜由来の脂質、タンパク質を含み、内部には核酸(microRNA、mRNA、DNAなど)やタンパク質など細胞内の物質を含み、分泌した細胞の上記核酸がエクソソームを介して受け取り側の細胞に伝達され、機能していること明らかになっている。

すなわち、エクソソームは細胞間のコミュニケーションツールとして働いていると考えられている。

特に癌細胞由来のエクソソームは、癌細胞の周辺の細胞を制御し、癌の進展に関わることがこれまでに多数報告されており、さらに、癌細胞は正常細胞よりもエクソソームの分泌量が多い傾向にあるため、エクソソームの分泌は癌の様々な悪性段階に関与すると考えられている。

したがって、最近では、癌細胞由来のエクソソームの分泌を抑制することが癌治療に役立つことが期待されている。

これまでにエクソソームの分泌に関わる遺伝子としてRAB27やnSMASE2などが報告されていたが、癌細胞特異的に高発現している遺伝子ではないため、癌細胞のみを標的とすることができず、選択性に乏しいことから治療標的とすることが困難とされてきた。

今回、独自開発によるエクソソームの超高感度測定法であるExoScreen法とmicroRNAライブラリーを組み合わせた癌細胞におけるエクソソーム分泌関連遺伝子のスクリーニング法を使用し、前立腺癌細胞株を対象にスクリーニングを行い、miR-26aとその制御遺伝子であるSHC4、PFDN4、CHORDC1がエクソソームの分泌を制御していることを同定したことが報告された。

次いで、これらの遺伝子の発現を抑制した前立腺癌細胞をマウスに移植したところ、エクソソームの分泌が低下し、担癌マウスにおける腫瘍の増大が抑制できた。

さらにエクソソームの分泌が低下した前立腺癌細胞移植時に移植部位に前立腺癌細胞から分泌されるエクソソームを同時に注入すると、腫瘍の増殖が回復することも明らかになった。

今後、前立腺癌の治療としてSHC4, PFDN4, CHORDC1の遺伝子を標的とした薬剤の開発され、従来の治療法とは異なる、エクソソーム治療という、新たな治療法確立への道を拓くことが期待される。

本研究成果は、米国科学誌「Science Advances」電子版に掲載された。