白血球の一種であるB細胞が成熟した形質細胞は、細菌やウイルスから身体を守る抗体を産生する機能を有する。

多発性骨髄腫は、形質細胞が癌化した骨髄腫細胞となり発症する疾患である。

この骨髄腫細胞は、抗体としての機能を有さないMタンパクを生成するため、生体内での感染防御機構が破綻する。

これまで、この多発性骨髄腫の発生・進行には様々な遺伝子の異常が蓄積することは報告されていたが、病気の悪性化に関わる遺伝子異常については明らかになっていない。

今回、骨髄腫細胞の増加を促すタンパク質であるインターロイキン6 (IL6)による遺伝子レベルでの影響における研究結果が報告された。

PDZ binding kinase(PBK)遺伝子の発現が高いほど生存率が低くなる傾向が明らかになり、ゲノム編集法を用いて PBK 遺伝子を破壊すると、ヒト骨髄腫の腫瘍形成能力が破壊前と比べて著しく低下した。

また、PBK タンパク質の活性を抑制する阻害剤を腫瘍形成後のマウスに投与すると、阻害剤投与によって腫瘍の増加は顕著に抑制された。

これにより、PBK は骨髄腫の進行または悪性化に深く関与し、PBK をターゲットにした治療は骨髄腫の新しい治療法の開発につながる可能性が示唆された。

本研究成果は、米国科学誌 『Journal of Interferon and Cytokine Research』オンライン版にパブリッシュされた。