膵臓癌は、診断時に70-80%の症例が局所進行や遠隔転移のために切除不能であり、さまざまな消化器癌の中でも極めて予後不良であり、5 年生存率は10%前後である。

その中でも腹膜播種を伴う膵臓癌は、腹水や腸閉塞のために低栄養や全身状態の悪化をきたし抗癌剤治療を受けることができない場合が多い。

腹膜播種の症例に対し抗癌剤を直接腹腔内に投与する方法は、全身化学療法と比べてより高濃度で癌細胞を治療できるメリットがあり、ゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法にパクリタキセルの腹腔内投与を組み合わせる治療法についての有効性と安全性が報告された。

その結果、治療成功期間中央値は 6ヶ月であり、膵臓癌原発巣は平均 20%の縮小を認めた。

腫瘍マーカーは 84%で低下し、正常化まで認めた症例は26%であり、治療奏功率は 49%、病勢コントロール率は95%と非常に高い治療効果が得られた。

癌性腹水は40%の症例で消失し、陽性であった腹水の癌細胞は 39%で陰性になった。

生存期間中央値は 14.5 ヶ月、1 年全生存割合は 61%であった。

この治療法によって腹膜転移が消失して最終的に膵癌の切除のための外科的手術が施行できた症例は17%で、切除不能症例と比較して明らかに良好であった。

この治療法の血液学的な副作用は 76%、非血液学的な副作用は 15%と高めであったが、重大な副作用は認められなかった。

この腹腔内投与と標準療法の比較試験を遂行し、難治性膵臓癌の治療成績のさらなる向上に寄与すると考えられる。

本研究成果は、国際科学雑誌British Journal of Surgeryに掲載された。