今回、体格と脳腫瘍の罹患リスクとの関連について、多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果がAnn Epidemiolにウェブ報告された。

岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所の管内在住の40~69歳の約10万人を追跡した調査結果にもとづいて、体格(Body Mass Index, BMIと身長)と脳腫瘍罹患との関連を調べた。

発生頻度の高い脳腫瘍のなかで、良性である髄膜腫と悪性である神経膠腫について調査した。

BMIが高いと髄膜腫のリスクが高くなることが明らかになっているが、神経膠腫については不明であり、欧米人とは体格の異なるアジア人からの報告はなかった。

欧米の疫学研究の報告では、身長については低身長(160㎝未満)と比較して高身長(190㎝以上)で神経膠腫のリスクが約2倍であることが報告されている。

今回、欧米人とは体格の異なる日本人における、体格(BMIと身長)と脳腫瘍との関連を調べた。

BMI18.5-<23のグループと比較してBMI27.5以上のグループで男性のリスクが増加しており(ハザード比2.14、95%信頼区間0.99-4.59)、BMIが増加すると男性の脳腫瘍の罹患リスクが増加する傾向がみられたが、女性では関連性は認められなかった。

脳腫瘍の種類別にみると、神経膠腫では関連は認められなかったが髄膜腫では、BMIが増加するとリスクが増加する傾向がみられた。

一方、調査開始時に調査アンケートから得られた身長を、男女別に身長の低いほうから3つのグループ(男性:<162、162-<167、≧167 女性:<150、150-<154、≧154)にわけて脳腫瘍の罹患リスクを検討した場合には関連はみられなかった。

今回、体格の異なるアジア人でもBMIが高いと髄膜腫のリスクが高くなる結果がみられた。

そのメカニズムとして、肥満に関連する慢性炎症や脂肪細胞から産生されるエストロゲンが関係していることが報告されているが、本研究では、体格と脳腫瘍の関連が男性でのみ見られたことから、日本人の脳腫瘍の罹患には慢性炎症がより関係している可能性が考えられる。

今後も日本を含めたアジアから、さらなる研究結果の蓄積が必要と考えられる。