蛍光生体イメージング診断法は、医療分野における癌の早期発見や術中観察などの活用に期待されている。

今回、励起光の波長を調整することにより、癌組織を体外から観察できるだけでなく、表面から深部まで深さを調整しながら癌組織を観察することに成功したと報告された。

この本ナノ粒子は安全性も高く、生体内で長期間の観察が可能であることも実証され、さらに免疫反応の生体外からの観察も行うことが可能であった。

異種細胞を移植すると、生体内で標識した免疫細胞であるマクロファージが集積し移動し、拒絶反応に寄与する様子が観察できた。

これらの成果は、画像診断を含むがん研究や免疫学研究、再生医療への応用が期待できると考えられる。

さらに本粒子の光学特性を検討し、近赤外蛍光に加えて可視蛍光やアップコンバージョンと呼ばれる励起光より高エネルギーの光が発生する特性も発見された。

米国では、近赤外蛍光シリカナノ粒子が、癌造影剤として既にヒト臨床治験が進められ、診断薬や治療薬としての開発が進んでいる。

癌医療における「診断と治療の一体化(セラノスティクス)」の実現に繋がるものと期待できる。

本研究成果は、アメリカ化学会専門誌 Chemistry of Materialsに公開された。