卵巣癌は、極めて進行が早く、治療抵抗性の予後の悪い癌である。
さらに、女性200人に一人がこの卵巣癌で死亡し、また本邦の卵巣癌患者の死亡率は、特に若年層で欧米よりも高いことが報告されている。
そのため、早期発見のアプローチが不可欠であり、従来の概念を覆す早期診断法の開発に向けた新たな発想・技術の導入が期待されている。
従来の血清蛋白腫瘍マーカーは、単一分子への抗原抗体反応を基本としたアッセイ系による分子の測定によって評価する検査であり、早期の段階での卵巣癌の発見には不向きである。
今回報告されたLC/MSによるCSGSAは、単一腫瘍マーカーの概念とはまったく異なる診断方法であり、血液から糖蛋白を抽出し、糖ペプチドとしてLC/MSに投入、そこから得た2次元データから再現性のある約2,000のピーク値を抽出し、そのすべてのピーク値データを患者間で比較して単一腫瘍マーカーを同定、あるいはすべてのピーク値データを用いて病態の判別を行う診断システムである。
CSGSAに統計学的解析法(OPLS-DA法)、人工知能(AI)を応用し、血清のみから初期卵巣癌の診断を可能にする2つのアルゴリズムの開発に成功した。
今後は、診断精度のさらなる向上を目指すとともに、CSGSAを用いた卵巣癌の早期診断による卵巣癌死亡率の減少などのデータ蓄積とエビデンスが求められる。