microRNAは、標的mRNAの複製時の最終設計図の調整を行うタンパク質にならない小さな非コードRNA である。

microRNAは全遺伝子の約半数の発現を制御しており、特にLet-7は最初に発見されたmicroRNAの一つであり、進化的によく保存され、癌の抑制機能や発生において非常に重要な遺伝子である。

このLet-7は、Lin28などいくつかのRNA結合遺伝子による制御を受けており、今回、約 1000 種類のRNA結合タンパク質全てを標的として、Let-7を制御する遺伝子を細胞ベースで網羅的に探索する独自のスクリーニングを構築し、新しい制御機構の解明について報告された。

Let-7¥の結合配列を配したレポーターを作製し、Let-7の細胞内の発現量変化を測定できるルシフェラーゼレポーターアッセイをベースにしたスクリーニング系を開発し、1469種類の全RNA 結合タンパク質とその関連遺伝子を標的として、Let-7 を制御する遺伝子のスクリーニングを行なった。

その結果、既に報告されている遺伝子(Lin28)の制御に加えて、tRNAシュードウリジン合成酵素の一つであるTruB1が、microRNA の中でも Let-7 を特異的に上昇させることが明らかとなった。

TruB1は、let-7を上昇させる一方で、その前駆体であるpri-let-7を低下させており、転写への関与ではなく、転写後の成熟化を促進していることが示唆された。

また、TruB1のRNA 修飾酵素活性を失活させた変異体を作製するた、この変異体においてもLet-7の上昇が認められ、TruB1がその酵素活性とは関わらずに Let-7 の成熟化を促進していることが明らかになった。

次に、細胞内の TruB1 に標識を導入した遺伝子編集細胞を樹立し、内在性の遺伝子に直接結合するRNAを次世代シークエンサー で同定するHITS-CLIP( High throughput sequencing crosslinking immunoprecipitation)法を行うと、let-7の前駆体のステムループ構造に一致して結合することがわかった。

さらに、TruB1はmicroRNAの成熟化に中心的に関わる他の遺伝子(DGCR8)やLin28と共同、あるいは競合的に働いていることも明らかとなった。

また、TruB1は細胞増殖を抑制しているため、let-7の抑制によってその細胞増殖抑制が部分的に解除され、TruB1-let-7系による細胞増殖への抑制機能が示唆された。

これにより、TruB1によるLet-7の制御機構は非常に選択性が高いため、癌や発生の病態解明や治療開発につながることが期待される。

この研究成果は国際科学誌 The EMBO Journal にオンライン版で発表された。