本邦において多く認められる胃癌は、内視鏡検査によるESDなど治療の進歩により早期の段階で発見されると完治する場合が多い。
ただ、進行性胃癌は外科的手術の対象となり、肝転移などのSTAGE4になると化学療法が施行される。
しかし、抗がん剤治療薬の選択肢は充実せず、また癌細胞の耐性獲得などにより効果が認められる場合は少なく、現在、免疫チェックポイント阻害抗PD-1抗体であるニボルマブの保険適応申請がなされている。
今回、免疫チェックポイント阻害療法の奏効率改善に向けた基礎研究の報告が、科学雑誌Journal for ImmunoTherapy of Cancerに掲載された。
免疫チェックポイント阻害療法は、がん細胞を攻撃するキラーT細胞の疲弊解除を目的とした画期的な治療法であるが、その奏効率は20~30%程度である。
実験では、マウスモデルにおいて、抗原提示能を持った樹状細胞をがん組織に誘導することにより、この奏効率を改善した。
実際には、マウスモデルを用いて、がん細胞を攻撃するキラーT細胞を増加させ、さらに免疫チェックポイント阻害療法との併用療法で抗腫瘍効果を増強することが確認された。
具体的には、CCL19 というタンパク質を産生する間葉系細胞を腫瘍局所へ投与することにより、抗原提示能を持つ樹状細胞が呼び寄せられ、がん細胞を攻撃するT細胞を活性化することで抗がん応答を増強する。
CCL19 産生間葉系細胞の局所投与により、腫瘍に浸潤する活性化キラーT細胞が増加していることがマウスモデルで確認された。
免疫チェックポイント阻害療法に加えて、CCL19 産生細胞を投与したマウスでは、6 匹中 5 匹のマウスで腫瘍が完全に消失した。
今後は、さらなるデータの蓄積により、生体投与による癌治療の奏功率向上が期待される。