膵臓癌は、進行が速く、既に癌が浸潤、転移し手術不能な状態で発見されることが多く、5年生存率は10%に満たない。

今回、膵臓癌の早期診断法と、新たな治療法の開発についての報告がなされた。

FGFR4は正常のヒト膵臓組織ではほとんど発現していないが、転移を伴うようなステージが進んだ症例では多く発現している。

ヒト膵臓がん培養細胞のPK-1細胞では、FGFR4が高発現しており、他の細胞からのFGF19だけでなく、癌細胞が自ら産生したFGF19を利用するautocrine/paracrine機構が働いていることが確認された。

また、FGFR4の特異的阻害剤であるBLU9931を投与すると、膵臓癌細胞のERK、AKT、およびSTAT3経路が阻害され細胞増殖が低下し、MT1-MMPも低下させることにより、細胞浸潤も阻害された。

次に、BLU9931存在下で膵臓癌細胞を培養すると、細胞の巨大化、老化関連bガラクトシダーゼ活性の増加、SASPなどを特徴とする細胞老化が誘導され、老化した膵臓癌細胞は、老化細胞死誘導薬のケルセチンで除去されることも確認された。

このように、FGFR4の阻害により膵臓癌の増殖と浸潤を抑えるとともに、老化を誘導することが可能であることが明らかにされ、FGFR4を発現する膵臓癌に対して老化誘導し、老化細胞死誘導薬を併用する画期的な治療法となることが期待される。

さらに、光免疫療法にもFGFR4が標的分子になることが期待される。

本研究成果は、スイスMDPI社の癌専門科学雑誌「Cancers」誌のオンライン版に掲載された。