がんの増殖を抑制する薬剤を封入した微小な高分子のカプセルを肝臓がんのマウスに血管投与することにより進行を制御する実験に成功したことが、米国の消化器学専門誌の電子版に掲載された。
正常組織の血管壁は均一で密な構造をしているため、酸素や栄養分を吸収し、高分子化合物などの異物は浸透しないが、一方がん組織の血管の壁には逆に栄養分を多く取り入れるための100ナノメートルの隙間があり、20~200ナノメートル程度の物質は浸透し癌組織内に蓄積される。
このEPR効果を利用し、薬剤を封入した直径120ナノメートル前後のカプセルを静脈注射することにより、がん組織に到達・吸収・溶解し薬がん細胞内で薬剤が放出される。
副作用が強い「2DG」という薬剤の全身投与においても、少ない使用量でがんに到達するため副作用も小さくて済む。
がん細胞は増殖するために栄養としてブドウ糖を過剰摂取するため、ブドウ糖と構造が類似している2DGを投与することにより活動が鈍化する。
カプセルを投与したマウスと投与していないマウスを比較すると、がんの大きさが平均で半分ほどに抑制された。
また、ヒトがん細胞と免疫細胞を培養した溶液にカプセルを投与すると、がんが使用しないブドウ糖を免疫細胞が消費して活性化し、がんをより攻撃することも明らかになった。
今後は、他の抗がん剤と併用し、より高い効果が期待できると考えられる。