一般にほとんどの癌は予後判定として5年生存率が用いられる。

ただ、乳癌は他の癌腫と違い5年以上経過して再発する場合があり、10年生存率が使用される。

その解明にさまざまな研究がなされているが未だに不明な部分も多く明らかになっていない。

今回、他の臓器へ転移し休眠状態にある乳癌細胞は、オートファジーを起こすことで確実に長期にわたり生存できるようになることを明らかにした論文が、Natuerに掲載される。

乳癌による死亡の主な原因は、休眠中の腫瘍細胞の転移の発生によって起こる再発である。

休眠中の乳癌細胞は、使い古された細胞成分の一部を分解し、再利用成分と置き換えることによって細胞を自己修復する基本的な機構であるオートファジーによって、長期にわたって生存することが可能となる。

今回、転移した乳癌細胞がオートファジーを起こし、転移先の臓器において休止状態で生き残ることが明らかにされた。

3次元細胞モデルとマウスモデルを使って、転移して休眠状態にある乳癌細胞におけるオートファジーが遺伝的操作や阻害薬によって阻害されると、乳癌細胞の生存が妨げられ、転移した臓器で腫瘍の増殖が抑制されることを明らかにした。

また、損傷したミトコンドリアと酸化ストレスの蓄積による細胞死が、オートファジーの阻害によって腫瘍細胞の生存能力が低下したことも確認された。

これらのことは、オートファジーの選択的阻害には乳癌の再発を防止する治療の可能性があることを示唆している。