原発性脳腫瘍は、脳細胞や脳膜、脳神経などから発生した腫瘍であり、転移性脳腫瘍は、他の臓器癌が血行性に脳に転移したものである。
悪性脳腫瘍は主に脳実質に発生し正常組織との境界は不明瞭で、また増殖速度は速く周囲組織に浸潤していく。
脳腫瘍やそれによって発生する脳浮腫による症状は、頭蓋骨内部の圧力が高まるために起こる頭蓋内圧亢進症状と、腫瘍が発生した場所の脳が障害されて起こる局所症状(巣症状)に分けられる。
頭蓋内圧亢進症状としては頭痛、吐き気、意識障害などがあり、局所症状(巣症状)としては、前頭葉の場合は反対側の運動麻痺や運動性失語など、側頭葉の場合は反対側の視野障害や感覚性失語など、頭頂葉の場合は反対側の感覚障害や失算、失認などがある。
ただ、症状が現れた時点で既に腫瘍が進行していることが多く、脳腫瘍の早期発見が可能な簡便かつ有用な診断マーカーの開発は、脳腫瘍の治療成績や神経症状の改善に急務の課題である。
また、脳腫瘍は手術摘出による本来あるべき機能が失われるリスクを伴う場合があり、血液を用いた診断が可能になれば、手術を回避し速やかに放射線治療や化学療法を開始できるメリットとなる。
今回、通常はCTやMRIなどの画像検査で診断される脳腫瘍について、血液を用いたリキッドバイオプシーによる診断モデルの作成に成功したと報告された。
脳腫瘍の中でも発生頻度が高い悪性神経膠腫をはじめとするさまざまな脳腫瘍について、血液中のマイクロRNAを用いて高い精度(感度95%、特異度97%)で鑑別する診断モデルが作成された。
更に、悪性脳腫瘍の中でも類似の画像所見を呈することがある膠芽腫、転移性脳腫瘍、中枢神経系原発悪性リンパ腫についても診断モデルの作成を試み、血液による診断の可能性が示唆された。
このように、血液を用いた簡便かつ高い精度の脳腫瘍診断が可能になると、健康診断などで脳腫瘍を早期に発見することができ、その結果、早期治療の開始につながり予後の改善が期待できる。
今後更になる検証により、悪性脳腫瘍の早期発見と治療成績の向上に寄与することが期待される。