上衣腫は、脳の中の髄液を作る脳室という場所の表面を覆っている細胞である上衣細胞が腫瘍化したものである。
腫瘍がテント上(大脳半球)にできた場合は、頭痛、嘔吐、けいれん、てんかん発作、手足の麻痺、知覚障害、失語、視野欠損などがあり、テント下(第四脳室)にできた場合は、頭蓋内圧上昇による症状のほか、小脳失調による運動失調や、顔面神経麻痺、眼球運動障害、嚥下障害、嗄声などの症状がでる。
15歳未満の小児に好発し、診断時の平均年齢は5~6歳、3歳未満で発見されるのは25~40%であり、3歳未満で予後が悪い。
治療法は,小児にとって負担の大きい摘出手術と放射線治療が一般的であり,有効な化学療法の確立が期待されている。
今回、細胞レベルでTPRの発現を抑制することにより,オートファジーが活性化し、TPRの発現を減少させた上衣腫細胞をマウスに移植すると、上衣腫の成長が抑制されることが報告された。
さらに,上衣腫細胞を移植したマウスに免疫抑制作用を持つ化合物ラパマイシンを投与することにより,TPR発現が抑制されるとともに,オートファジー誘導が起こり,上衣腫の腫瘍形成が抑制されることが明らかになった。
これらの知見は、上衣腫における新たなバイオマーカーや治療法の確立に役立つことが期待される。
本研究成果は、米国科学誌『Autophagy』のオンライン版に掲載された。