C型やB型などのウイルス性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)において、進行とともに肝がんを併発する。

特に悪性度の高い肝がんは早期発見が難しく、現在用いられているα-FetoproteinやPIVKAなどの腫瘍マーカーの感度は十分ではなく、悪性度の高い肝がんを同定出来る有用なバイオマーカーは存在しない。

また、進行性肝がんに対してはマルチチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるソラフェニブとレンバチニブが標準治療として使用されてきたが、2剤の治療効果は同程度であり薬剤選択の指標となる有用なバイオマーカーもない。

今回、肝がんを対象としたがんゲノムシークエンス解析により、肝がんにおける病態進展に関わるがん遺伝子の異常と腫瘍間不均一性が薬物療法の治療効果に与える影響についての報告がなされた。

まず、複数のがん遺伝子を一度に肝細胞に導入する手法を確立し、これによりがん遺伝子がランダムに活性化した腫瘍間不均一性の高い肝がんを発症する新規のマウスモデルを作成した。

このマウスモデルに対してレンバチニブ治療を行うとFGF19遺伝子を発現した腫瘍の割合が無治療群と比べて有意に減少し、FGF19高発現肝がんがレンバチニブに対して高感受性であることが発見された。

次に肝がん細胞株を用いたプロテオーム解析により、FGF19の発現制御を受ける分泌タンパクST6GAL1を同定し、また肝がん外科切除例の検討から、血清ST6GAL1により予後不良なFGF19高発現肝がんを選別できることを見出した。

さらに、血清ST6GAL1濃度に基づいて患者を層別化すると、ST6GAL1高値群ではレンバチニブ治療群の予後がソラフェニブ治療群より有意に延長していることが明らかになった。

これらより、血清ST6GAL1濃度が高悪性度肝がんの同定や肝がん薬物療法における最適な薬剤選択のバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。

今後、血清中のST6GAL1濃度が悪性度の高い肝がんの同定や肝がん薬物療法における最適な薬剤選択のバイオマーカーとして用いられることが期待される。

本研究成果は、米国科学誌「Clinical Cancer Research」に公開された。