邦人にのみ存在 するBRCA2遺伝子のc.7847C>T (p.Ser2616Phe)というバリアントをもつ邦人の乳癌・卵巣癌患者を7家系10名同定した。このバリアントは、海外の⼀般集団データベースには登録されておらず、その病的意義は不明であった。

今回、国立病院機構東京医療センター遺伝診療科、佐々木研究所附属杏雲堂病院、国立がん研究センター、国立病院機構岩国医療センター、がん研究会有明病院、順天堂大学、昭和大学、慶應義塾大学、東京都立駒込病院との共同研究により、日本人に特有のBRCA2遺伝子のバリアントを発見、その病的意義を機能解析実験により実証し、病原性を証明した。

各種のシミュレーション解析の結果、本バリアントは高い確率で病原性を持つことが示唆され、また本バリアント保持者の臨床的特徴は、遺伝性乳癌卵巣癌の特徴と⼀致していた。

さらに、MANO-B法およびABCDテストと呼ばれる機能解析手法により、このバリアントが病原性をもつことが分子遺伝学的に証明された。

したがって、このBRCA2遺伝子のバリアントc.7847C>T (p.Ser2616Phe)は、乳癌・卵巣癌の発症確率を高める日本人集団に特有の病的バリアントであると結論づけた。

これにより、当該バリアント保有者の乳癌・卵巣癌に対するサーベイランスやリスク低減手術、分子標的治療薬の使用につながり、ゲノム検査の結果に基づき患者一人一人にあった治療を行う個別化医療の実践に貢献することが期待される。

本研究成果は、国際科学誌 Cancer Science オンライン版に掲載された。