切除不能な進行再発大腸癌症例の一次治療に用いる分子標的薬として抗EGFR抗体薬と抗VEGF抗体薬を比較した2つの大規模なランダム化比較試験が実施されているが、RAS遺伝子野生型の大腸がんにおける事後的な解析結果は、両試験間で一致しておらず、どちらの薬剤を使用すべきか最終的な結論は出ていない。

その後、複数の臨床試験の後解析で、RAS遺伝子野生型で原発巣が左側の大腸癌症例に対して抗EGFR抗体薬が有効である可能性が示唆された。

今回、公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科と国立研究開発法人国立がん研究センター東病院らの研究グループは、RAS遺伝子野生型で原発巣が左側大腸癌症例さんにおける一次治療として、抗EGFR抗体薬、抗VEGF抗体薬のどちらを用いるのが最適か、真のエンドポイントである全生存期間を主要評価項目として世界で初めて前向きに検証した。

RAS遺伝子野生型で化学療法未治療の切除不能な進行再発大腸がん患者さんに対して適切な治療を検証するため、mFOLFOX6 +抗VEGF抗体薬(ベバシズマブ)併用療法とmFOLFOX6 +抗EGFR抗体薬(パニツムマブ)併用療法の有効性および安全性を比較した前向きランダム化比較試験(PARADIGM試験)を実施した。

その結果、主要評価項目である全生存期間において、原発巣が左側および全体のいずれの大腸症例においても、mFOLFOX6 +抗EGFR抗体薬併用療法がmFOLFOX6+抗VEGF抗体薬併用療法に対し、統計学的に有意な延長を示した。

欧米では2022年10月に大腸がん治療ガイドラインに本エビデンスが反映され、今後日本でも順次反映される予定で、より多くの大腸癌症例に個別化治療を届けられることが期待される。

本研究の成果は、科学雑誌「Journal of the American Medical Association (JAMA)」に掲載された。